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要旨:井上靖は日本現代文学界における誉れが高い小説家、詩人と評論家であるとともに、日中古代文化交流史研究家と日中友好社会活動家として活躍した。氏は芥川賞、毎日芸術賞などの文学賞を受賞した。井上靖のすべての作品の中で、中国歴史小説は非常に重要な地位を占めている。『敦煌』は氏の中国歴史小説の代表作の一つである。 1959年に、井上靖は『群像』の一月号から五月号にかけて、『敦煌』を掲載された。それから、『敦煌』は1960年の毎日芸術賞を受賞すると同時に、日本に敦煌ブームをも起こした。その小説を書く時に、氏は敦煌も西域にも、足を踏み入れていなかった。それで、この小説は大量の歴史書物の上に、氏の優れた想像力を加え、独特な物語を作り出した作品である。 小説の背景は中国の宋朝の天聖4年(1026)に設定されている。進士の試験に失敗した主人公の趙行徳が開封の市場でたまたま西夏の女を救うことから始まり、見知らぬ国の西夏に魅せられて西夏に赴いた。その後、行徳はウイグル王女を救った。行徳は王女と結ばれるのであるが、西夏の文化を勉強するために王女を離れた。しかし、行徳は西夏夢を追いかけために王女を失った。結局、行徳は西域に生きていくことを決心し、仏教の修行に励んだ。最後、西夏軍との決戦の前に、行徳は巨大な経巻を千仏洞の石窟の中に隠した。 井上靖の歴史小説においては女性を主人公にするのは少ないが、脇役としての役割は大変重要である。本稿において、小説『敦煌』における女性像を分析し、彼女たちは小説中で果した役割を検討していきたいと思う。また、井上靖の人生体験を通して、二つの女性像に氏の認識を分析する。
キーワード:井上靖 『敦煌』 中国歴史小説 女性形象
目次 要旨 中文摘要 はじめに1 1、『敦煌』について1 1.1、井上靖の西域夢1 1.2、『敦煌』の創作背景2 1.3、『敦煌』の内容2 2、『敦煌』の女性像2 2.1、西夏の女の人物像3 2.2、ウイグル王女の人物像3 3、『敦煌』における女性の作用4 3.1、西夏の女の作用4 3.1.1、理想を揺らす4 3.1.2、西夏夢の始め4 3.2、ウイグル王女の作用5 3.2.1、故郷を踏まない5 3.2.2、仏教に憧れる5 4、『敦煌』の女性像に対する井上靖の分析5 4.1、孤独な運命を持つ女性について6 4.2、反抗精神を持つ女性について6 おわりに6 参考文献8 謝辞9 |