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要旨:本稿は、接続助詞「から」で終わる省略表現をめぐって、「から」の完全文と省略文の論 理構造を確認し、接続助詞「から」で終わる省略文の特徴、また意味用法について、考察 してみた。そして、「のだから」の分析にも触れながら、「から」と「のだから」の用法を比較 して、その使い分けを試みた。 本稿は五章に分けて考察した。第一章は研究対象とその目的である。第二章では、 接続助詞「から」の省略文についての代表的な先行研究を整理した。完全文における接 続助詞としての機能からは単純に解釈できない用法や特徴があることを指摘している。接 続助詞「から」には、理由を表わす「から」と理由を表わさない「から」があると述べている。 第三章では、接続助詞「から」の論理構造を確認しておいた。筆者は白川博之の分析方 法で「から」の用例を分析し、前件の事柄が後件の事柄の原因、理由となることを表わす こと多いが、実際に使われている日本語の中に、理由を表わさない「から」の用例にしばしば遭遇すると述べている。第四章では、「から」の省略文の意味用法を分析し、「から」 が原因や理由を表わすほかに、他者への働きかけを示す場合もあると指摘し、接続助詞「から」の省略文を「原因、理由」と「情報の提示」の二つに大別する。第五章では、久野 の「省略の根本原則」の基づいて、「から」の省略文を復元してみた。文末部分に何がど のように省略されているのか、なぜ文末の省略が行われても聞き手は省略文を理解でき るのかについて、「から」の派生的用法を調べ、省略文の特徴を考察し、省略という観点 から、接続助詞「から」で終わる省略文を検討した。さらに、省略文を喜ぶ日本人の言語 習慣についても考察を行った。第六章では、接続助詞「から」と類似性がある「のだから」 について考察を試みた。まずは、「のだ」と「のだから」の関係を簡単に触れておいた。そ の上で、「のだから」の意味用法と独自の談話機能を分析する。「のだから」についての研 究は数多くあるが、本稿では「のだから」の先行研究をふまえて、聞き手が知っているは ずの事態を十分に認識させることが「のだから」の重要な性質であると考える。さらに、「の だ」が文中で担っている機能によって、「のだから」の省略文を主に「説明、説得の文」「非 難の文」「独り言の文」と三種類に分けた。最後に、「から」の用法との比較を通して、「の だから」と「から」の使い分けを考察してみた。第七章では本稿の考察をまとめた。 |