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要旨:『夢十夜』は、明治41年7月25日から同年8月5日まで、朝日新聞に連 載された。漱石42歳の時の作品で『坑夫』と『三四郎』の間に書かれている。 漱石が作品『夢十夜』において「夢」を素材に選んだことにより、この作品を どう読むかという、作品に対する態度をめぐって幾つかの混乱が生じているこ とは周知のことであろう。『夢十夜』に対して、伊藤整のその指摘(現実のす ぐ隣りにある夢や幻想の与へる怖ろしさ、一種の人間存在の原罪的な不安)は、 それ以後の『夢十夜』の評価の確かな礎石ともなり、今日の批判の先駆的な意 義を持つ。しかしながら、今までの研究は主に『夢十夜』の研究または『夢十 夜』と後の長篇小説のモチーフとの繋がりに集中し、『夢十夜』の前後「夢」 のには余り触れない。従って、本論は『夢十夜』を中心に、漱石文学における「夢」を検討しようと思う。 第一章は「夢」に対する漱石の考え方を考察している。主に明治 23 年から大正 5 年まで、漱石の書簡及び随筆に書かれているものを対象とする。夢は自 己の常には見えない闇の存在を実感させる。逆に言えばこの認識は、自己内部 の闇の部分つまり意識下を相対化する目線が、夢によって持たされているとい う事である。「夢の方法」は漱石が最も根深い所に眠る記憶を手繰り寄せるこ とになったのである。『夢十夜』や『永日小品』に見る如く、漱石の内部に潜 流する不可思議の現象への執着は根強いものがある。 第二章はテキスト分析の方法で、先行研究を踏まつつ『夢十夜』を四つの主 題から解析する。第一夜、第五夜、第十夜を「女性に関わるもの」として、第 二夜、第三夜、第四夜を「自己存在に対する問」として、第六夜、第七夜を「近 代日本開化への関心」として、第八夜、第九夜を「漱石前半生の記憶」として 考察する。夢の一夜一夜が、後の漱石の作品の個々に対して、殆ど直接になか り深く投影し、或は響き合っている。『夢十夜』は『三四郎』以下の長篇小説 のモチーフを予告していただけではなく、漱石その人の「内」を見抜くにも不 可欠な作品である。 第三章は漱石文学における『夢十夜』の重要性についての分析である。本論 は主に『夢十夜』前後漱石人生態度の転換と文学創作方式の転換から『夢十夜』の重要性を分析する。『夢十夜』が、『坑夫』と『三四郎』の間に位しているの は決して偶然ではなかったと思う。『夢十夜』は、文学方法上の浪漫主義への 訣別の碑であると同時に、人生態度としての浪漫主義(或は理想主義)へのそ れでもあったのである。 終わりでは、全体的に本稿をまとめ、結論を重ねて言明した。 キーワード:漱石文学;『夢十夜』;夢
中文摘要:《梦十夜》于明治41年7月25日到8月5日之间,连载在朝日新闻上。是夏目漱石42岁时写在《坑夫》和《三四郎》之间的一篇文章。众所周知在《梦 十夜》中,夏目漱石运用了梦的手法,造成了解读方法上的混乱。对于这点,伊 藤整认为夏目漱石在《梦十夜》中描写了现实与梦幻之间的一种‘原罪的不安’ 的说法,无疑给我们后来的研究者提供了指导性的意见。到目前为止,大部分的 研究都集中在《梦十夜》的各夜主题和漱石后期长篇小说主题的连接上,很少把 漱石文学中《梦十夜》前后的‘梦’联系起来看。因此,拙论以《梦十夜》为考 察重点,以漱石全集为中心,在先行研究的基础上对漱石文学中的‘梦’进行研 究和探讨。 论文第一章就夏目漱石本人对‘梦’的看法展开分析。主要研究对象是明治23年到大正5年之间的漱石的书信和随笔中对‘梦’的描写和看法。梦能让人 们感觉到平常不易察觉的内心的阴暗面。反过来说,梦是我们理解自我内部的黑 暗捷径。‘梦的方法’是漱石唤醒长眠于最根深的记忆的一种方法。像《梦十夜》 和《永日小品》里看到的一样,在漱石内部流淌着一种对不可思议东西的执着。 第二章用文本分析的方法,在先前研究的基础上,对《梦十夜》分四个主题 来分析。其中,第一夜,第五夜,第十夜属于和女性有关的题材,第二夜,第三 夜,第四夜主要是关于漱石对自己存在的思考,第六夜,第九夜主要涉及漱石对 现代日本开化的关心,最后,第八夜,第九夜是属于漱石对自己前半生的回忆。 我们可以发现,《梦十夜》不仅预告了《三四郎》以下漱石长篇小说的主题,也 是我们观察漱石本人内心的一个不可或缺的作品。 第三章主要分析了漱石文学中《梦十夜》的重要性。拙论主要从人生态度和 创作方法上对《梦十夜》的重要性做了分析。笔者认为漱石在《坑夫》和《三四 郎》之间写《梦十夜》绝对不是个偶然。《梦十夜》是漱石在文学方法上和浪漫 主意诀别同时,也是他人生态度上和理想主义告别的关键时期。 在最后,对本论文从总体上进行归纳总结,重申了结论。 关键字:漱石文学;《梦十夜》;梦
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